たそがれ壺記

古典の森に棲み暮らし、奇談・怪談を語る偏人のブログです。

【あやしい古典文学の壺】10/21更新について

次の二編を追加しました。

「甥天狗」:どうも天狗というのは、胡散臭さがぬぐえません。この話の天狗も、もっともらしいことを言っていますが、一筋縄ではいかない奴らだと思えます。

「先祖伝来の悪霊」:督姫は後々「毒饅頭事件」という噂が語られます。夫池田輝政の死後、実子の忠継に姫路藩を継がせるため、輝政の長子利隆を毒殺しようとしたというもので、これは事実無根のようですが、そんな噂がたつほど、家康の娘であるのを笠に着て、横暴に振る舞うことが多かったのかもしれません。

ハルさま:
>夏の日にくっきりと現れる黒い影が付いてくるのを見ると、なんとなく身体がぞわぞわとします。
先日、写真を整理していたら、地面にのびる影だけが写った一枚がありました。それは私自身の影らしいのですが、撮った記憶はありません。何か不思議なものに逢った思いで、見入ってしまいました。

【あやしい古典文学の壺】10/11更新について

次の二編を追加しました。

「胸が裂ける」:飲んだ湯薬がみな裂け目から漏れてしまうというグロテスクな虚しさ…。身につまされます。

「影のわずらい」:離魂・ドッペルゲンガーなどと類似の現象で、只野真葛が『奥州ばなし』に書いた「影の病」と同病のようですが、この話は、自分の姿を幻視するのではなく、あくまで自分の「影」に襲われるのです。影はそもそも自分につきまとうものですから、その点、現実味がありますよね。

【あやしい古典文学の壺】10/01更新について

次の二編を追加しました。

「火見番墜落」:若いころには意気がって危ない行動をしがちです。この番人もそうだったのか、あるいは考えあっての自死なのか。

「生首櫓」:死骸を奪い去る妖怪としては火車が代表的で、ほかにも死神坊主とか化け猫とかいろいろいます。この場合、首ないし全身が櫓の上にあったとのことですが、梯子段を運び上げたというより、空飛ぶ何ものかによると思われます。

ハルさま:
>生首櫓:結局…何も分からないままなんですね。
話の末尾を「狐狸の仕業であろう」とか「前世の因縁にちがいない」などと、分かったような分からないような結末にしていることも多いなか、謎のままというのも味わい深いと思いますが、いかがでしょうか。
>火見番墜落:…そもそも怪異とは何だったのか?
物陰から人語で話しかけるとか、障子の向こうで踊るとか、そういうたわいない怪異だといいですね。

【あやしい古典文学の壺】09/21更新について

次の二編を追加しました。

「松雲寺の小僧」:小僧は走水観音の上空で捨てられて以降、自力で日本橋まで辿り着いて住職に再会しますが、これも天狗(?)の誘導によるのではないかと考えられます。小僧の衣類を寺の裏山に捨てたり、いろんなことをするやつです。
なお、「上総国望陀郡請西(じょうざい)」というのは聞いたことがあるような気がして、調べてみたら江戸末期、請西藩の所在地でした。最後の藩主 林忠崇は、戊辰戦争の際、藩主でありながら脱藩して旧幕府軍に加わり、東北各地を転戦した人です。

「韮の園」:韮粥なんて旨いのか?と思ったら、「疲れた体にニラ粥」とかいって、血行促進・冷え性の改善・疲労回復などの薬効が語られておりました。長谷川某氏は、命がけで採ってきた韮を、食べることができたのだろうか。

ハルさま:
>途中まで供をさせておいて、置き去りにしてしまうのはどうかと思います。
松雲寺の所在地とされる請西は現在の木更津市内なので、小僧が住職と同道した木更津まで、さして遠くないと考えられます。小僧は見送り役だったのでしょう。
>これほどまでに韮の粥が食べたいと思った時点から、もう、死という定めに抗えなかったのかも…
まあ、そういうことになりますね。

【あやしい古典文学の壺】09/11更新について

次の二編を追加しました。

「うわばみの血」:「千疋狼」という類型の怪談の一つで、「鍛冶が嬶」とか「小池婆」などが知られますが、この話では狼が千頭出てくるわけではなく、うわばみ一匹です。そのうわばみが斬られたところから始まるのが、ユニークな気がします。

「蛇僧」:人が時として愛執に取りつかれるのは、逃れがたいことです。その執念が肥大してモンスターと化すのを、必死に抑制するしかありません。しかしモンスターは周慶を殺し、恩貞の命をも奪ってしまいました。
守誾はいかにも気の毒です…。だいたい、なんでこんなときは決まって蛇なのか。ウサギやリスなら、目を潰されたりしなかったろうに。

ハルさま:
>独りよがりな恋愛をして相手に迷惑をかけてしまう人は、現代にも脈々と存在し続けているようですが。
うまくいく場合ばかりではないので、迷惑をかけたりかけられたりは、ある程度仕方がない気もします。しかし、執念の怪物と化すのはまるで別のことですね。
>これは、奥さんがうわばみに変じたのか、それとも、…
「鍛冶が嬶」とか「小池婆」では、化け物が嬶や婆を食い殺して、なり替わっています。しかしこの話を考えるに、「与八郎の妻はもともとうわばみであった」というのがしっくりするのではないかと…。